新着記事

  • 一部期間(約7か月)のパソコンの起動時間から、他の期間(約14か月)の労働時間の推計まで認められた例
    on 2022年9月29日

    1.パソコンの起動時間による労働時間の立証 タイムカード等による労働時間管理が行われていない会社であったとしても、時間外労働を行っていた事実さえ立証できれば、時間外勤務手当等を請求することは可能です。 こうした会社で時間外労働の事実を立証するため、パソコンのログイン・ログオフ記録や、携帯電話のGPSによる在社時間記録を利用することがあります。 しかし、パソコンの起動時刻にせよ、GPS記録にせよ、古い記録は残っておらず、残業代(時間外勤務手当)請求の対象期間の一部でしか入手できないことが少なくありません。 それでは、この客観証拠のある一部期間の記録を分析することによって、客観証拠のない残部期間の…

  • 調書への記載を求める時は文言まで明確に特定すること(裁判所を信頼しすぎるのは危険)
    on 2022年9月28日

    1.口頭弁論調書等への記載 民事訴訟法160条は、 「裁判所書記官は、口頭弁論について、期日ごとに調書を作成しなければならない。」 と規定しています(口頭弁論調書)。 口頭弁論調書の実質的記載事項は民事訴訟規則で定められており、弁論の要領のほか、 「裁判長が記載を命じた事項及び当事者の請求により記載を許した事項」 を記載するとされています(民事訴訟規則67条)。 これと同様に、弁論準備手続や書面による準備手続でも、期日ごとに調書が作成されます(民事訴訟規則88条、91条4項参照)。 2.調書への記載の請求 この調書への記載請求は、民事訴訟実務上、重要な意味を持っています。 例えば、残業代請求訴…

  • 教授の自由-大学教授の講義内容や方法に対する干渉が違法であるとされた例
    on 2022年9月27日

    1.大学教授の就労請求権 一般論として、労働者には特定の仕事をさせるように請求する権利(就労請求権)までが認められているわけではありません(東京高決昭33.8.2判例タイムズ83-74参照)。 しかし、これには幾つかの例外があります。その一つが大学教授です。大学教授には就労請求権が認められやすい傾向にあります(第二東京弁護士会労働問題検討委員会『2018年 労働事件ハンドブック』〔労働開発研究会、第1版、平30〕10頁参照)。 この大学教授の就労請求権に関し、以前、授業担当を外すことが違法とされた例をご紹介させて頂きました。 大学教授の授業担当外しが違法とされた例 - 弁護士 師子角允彬のブロ…

  • ハラスメント事案において使用者による債務不存在確認訴訟の活用が否定された例
    on 2022年9月26日

    1.債務不存在確認訴訟の攻撃性 債務不存在確認訴訟という訴訟類型があります。これは義務者とされている人の側から、権利を主張している人に対し、自分に義務(債務)がないことの確認を求める訴訟をいいます。 通常、訴訟は権利を主張する側が、義務を履行して欲しい相手方を訴えることで始まります(給付訴訟)。しかし、義務があると言われている側にも、いつまでも紛争が解決しない状態から抜け出すため、義務(債務)が存在しないことの確認を求めて裁判所に出訴することが認められています。 実務上、この債務不存在確認訴訟には、攻撃的な性格があると言われています。攻撃性があるというのは、主張立証責任の所在と関係します。債務…

  • 勤務先から未収金を支払えと言われたら・・・
    on 2022年9月25日

    1.未収金を支払え クラブホステスなどの一定の業種では、事業主から顧客に対する未収売掛金の支払の保証を求められることがあります。これの亜種というわけでもありませんが、使用者から未収金の支払いを求められる労働者は少なくありません。法律相談をしていると、一定の頻度で、会社から未収金の支払いを求められている/求められて支払うと約束してしまったがどうしたらいいのかという質問を受けます。 求められているだけであれば、応じられないと断ればよいだけです。 問題は、求められて拒み切れずに曖昧な返事をしてしまったり、支払うと約束してしまったりした場合です。このような場合、労働者は使用者からの未収金の請求に応じな…

  • 業務委託契約扱いされていた労働者からの国民健康保険料の半分に相当する額の損害賠償請求が認められた例
    on 2022年9月24日

    1.労働者性が争われる事件 労働者かどうか(労働基準法、労働契約法をはじめとする労働法の適用があるか)は契約の名称によって決まるわけではありません。就労の実体で決まります。したがって、業務委託契約(準委任契約)という表題のついた契約書のもとで働いていたとしても、実質において労働者のような働き方をしていた場合、自分は労働者であるとして労働法上の諸権利を行使することができます。 業務受託者が労働者性を主張する場面としては、従来、契約関係の解消の効力を争う場面、割増賃金を請求する場面、労働者災害補償保険法(労災)の適用を求める場面などがありましたが、近時公刊された判例集に、一例を加える裁判例が掲載さ…

  • 業務委託契約に変更されていても、なお労働者であると認められた例(自由な意思の法理の適用?)
    on 2022年9月23日

    1.労働契約から業務委託契約への切替え 少し前に、ある企業が社員を個人事業主化することを発表して話題に上ったことがありました。 その影響か、近時、労働契約(雇用契約)を業務委託契約(準委任契約)に切り替えられたという相談が増えているように感じています。 労働契約と準委任契約とでは、その内容が大きく異なります。 労働契約の場合、労働者は労働基準法や労働契約法をはじめとする各種労働法の保護を受けることができます。例えば、客観的合理的理由、社会通念上の相当性が認められない限り、使用者から一方的に契約関係を解消されること(解雇されること)はありません(労働契約法16条)。 他方、業務委託契約の場合、労…

  • 公務員-転任と同じ内容の職務命令の発令は許されるのか?
    on 2022年9月22日

    1.職務命令と転任 地方公務員法32条は、職務命令について、 「職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」 と規定しています。 他方、地方公務員法15条の2第1項2号は、転任を、 「職員をその職員が現に任命されている職以外の職員の職に任命することであつて前二号に定めるもの(上位又は下位の職に任命するもの 括弧内筆者)に該当しないものをいう」 と定義しています。分かりやすく言うと、横滑りの異動(水平異動)のことです。 このように職務命令と転任は異なる条文に規定されています。概念…

  • 精神疾患で休職していた労働者に対し、復職後に何の配慮もしないことは許されるのか?
    on 2022年9月21日

    1.復職要件 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要がありま。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕479頁参照)。 それでは、傷病が「治癒」したとして復職した労働者に対し、使用者は何の配慮もする必要がないといえるのでしょうか? 治癒して復職している以上、労働者は従前の職務を通常の程度に行えるようになっているはずです。そうであれば、使用者としても、特段の配慮をする必要はなく、従前と同様、一般労働者と同じように処遇してよさそうにも見えます。 …

  • 公務員の飲酒運転-一審で違法とされた退職手当全部不支給処分が二審で適法とされた例
    on 2022年9月20日

    1.公務員の飲酒運転 公務員の飲酒運転に対し、行政はかなり厳しい姿勢をとっています。例えば、国家公務員の場合、酒酔い運転をしたら、人を死傷させなくても免職か停職になるのが通例です。 https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html 懲戒免職処分を受けた場合、基本的に退職金(退職手当)は支払われません(国家公務員退職手当法12条1項、国家公務員退職手当法の運用方針 昭和60年4月30日 総人第 261号最終改正 令和元年9月5日閣人人第256号。地方公務員においても、大抵の地方自治体は条例…