新着記事

  • 無期転換ルール 大学講師の立場をどうみるか?
    on 2022年5月17日

    1.無期転換ルールの例外(大学教職員) 労働契約法18条1項本文は、 「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約・・・の契約期間を通算した期間・・・が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。」 と規定しています。 これは、簡単に言うと、有期労働契約が反復更新されて、通算期間が5年以上になった場合、労働者には有期労働契約を無期労働契約に転換する権利(無期転換権)が生じるというルールです(無期転…

  • 公務員-手続上の違法(理由付記の不備等)だけで懲戒処分の取消請求が認められた例
    on 2022年5月16日

    1.手続上の違法の位置づけ 公務員の懲戒処分の効力を争う場合、手続違反を主張するだけで勝訴することは容易ではありません。敗訴判決を受けても、行政側としては正当な手続をやり直して同じ処分を行えば良いだけであるため、懲戒処分の瑕疵が手続違背に留まってる場合、敢えてこれを取消しても仕方がないという考え方が根強く存在しているからです。そのため、手続上の違法だけで懲戒処分の効力を否定した裁判例は、あまり多くありません。 このような裁判例の傾向がある中、近時公刊された判例集に、手続上の違法があることだけで懲戒処分の効力を否定した裁判例が掲載されていました。大津地判令3.12.17労働判例ジャーナル122-…

  • 労災における労働時間の意味-質的過重性
    on 2022年5月15日

    1.労災における労働時間 労働者災害補償保険法に規定されている保険給付を受けるにあたり、労働時間は重要な意味を持っています。 例えば、精神障害との関係でいうと、 「発病直前の連続した3か月間に、1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった」 場合、強い心理的負荷が発生するとされています(平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について 最終改正:令和2年8月21日 基発0821第4号」参照)。 また、脳・心臓疾患との関係でいうと、 「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6…

  • ノルマが達成できなかったことによる心理的負荷の判断方法
    on 2022年5月14日

    1.精神障害の労災認定 精神障害の労災認定について、厚生労働省は、 平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(最終改正:令和2年8月21日 基発0821第4号) という基準を設けています。 精神障害の労災補償について|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000661301.pdf この認定基準は、 対象疾病を発病していること、 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること、 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと、 の三つの要件が満たさ…

  • シンポジウムに引き続いて行われた大学教授の退官(退職)記念祝賀会を大学経費として支出できるか?
    on 2022年5月13日

    1.退官(退職)記念祝賀会 大学教授が退官(退職)する時、記念祝賀会が開催されることがあります。 地位の特殊性が反映されるためか、大学教授の退官(退職)記念祝賀会は、学術的な性質を帯びていることが少なくありません。 それでは、シンポジウムに引き続いて行われる退官(退職)記念祝賀会の費用を研究費等の大学経費から支弁することは許されるのでしょうか? 大学教授の労働契約上の地位の特殊性には常々関心を持っていたところ、近時公刊された判例集に、この問題について判示した裁判例が掲載されていました。福岡地判令3.11.19労働判例ジャーナル121-56 国立大学法人九州大学事件です。 2.国立大学法人九州大…

  • 録音にあたっては事前に弁護士に相談を-有給休暇の取得妨害をめぐる訴訟を題材に
    on 2022年5月12日

    1.録音の重要性 使用者側の違法な言動を立証するにあたり録音が重要であることは、現在では広く一般の方にも知られています。予め録音を取得したうえで法律相談に見られる方も増えているように思います。 しかし、相談者の方が取得した録音を聞いていると、状況の設定や発問の仕方をもう一工夫していれば決定的な証拠になったかも知れないという意味で、「惜しいな」と思うことが少なくありません。 近時公刊された判例集にも、録音の惜しかった裁判例が掲載されていました。大阪地判令3.11.25労働判例ジャーナル121-56 KANADENKO事件です。 2.KANADENKO事件 本件で被告(被控訴人)になったのは、電気…

  • 退職勧奨に応じられない場合には、退職しない意思を明確に表明することⅡ-拒絶の仕方が甘いと勧奨が止まらない
    on 2022年5月11日

    1.退職勧奨への対応 少し前に、 退職勧奨に応じられない場合には、退職しない意思を明確に表明すること - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事を書きました。 この記事の中で、退職勧奨に応じられない場合に、退職しない意思を明示的・明確に表明することの重要性について指摘させて頂きました。 それでは、不本意な退職勧奨への対応としてしばしば言われてている「明示的」「明確」な拒絶意思の表明と認めてもらうためには、どれくらいトレートな物言いが必要になってくるのでしょうか? 近時公刊された判例集に、この問題を考えるにあたり参考になる裁判例が掲載されていました。東京地判令3.12.21労働判例ジャーナル12…

  • 直接の行為者ではない複数の者の懲戒-総合調整事務に基づく責任と監督責任
    on 2022年5月10日

    1.巻き添え型の懲戒処分 官公庁や役所で不祥事が発生した場合、監督責任等の名目で、直接の行為者ではない方まで懲戒処分を受けることがあります。 上長や同僚として気を配っていれば不祥事を回避できたのではないかと言われると、概念的には理解できるのですが、自分で非違行為をしたわけでもないのに不祥事を起こした他人の巻き添えで懲戒処分を受ける方を見るにつけ、大変気の毒に思います。 近時公刊された判例集に、こうした巻き添え型の懲戒処分の取消請求が認容された裁判例が掲載されていました。長崎地判令3.10.26労働判例ジャーナル121-48 西海市事件です。この事件は、直接の行為者ではない複数の公務員の懲戒責任…

  • 残業の許可制-「忙しいだろうと思うけど早く帰るように」等の言動があっても黙示の残業命令が認定された例
    on 2022年5月9日

    1.残業の許可制・事前承認制 時間外勤務手当等の発生を抑止するため、事前に上長の許可や承認を得ることを残業の要件としている会社があります。 これが実効性をもって運用されていて、許可や承認のない残業が明確に禁止されているような場合には、使用者に隠れて残業をしたとしても、時間外勤務手当等を請求することは困難です。 他方、これが単なる名目上のもので、事実上残業することが黙認されていたような場合には、形式上、許可や承認が得られていなかったとしても、時間外勤務手当等を請求することができます。 しかし、労務管理の現場では、両者の中間的な運用がされていることが珍しくありません。労働者が無許可・無承認で働いて…

  • 事業場外労働みなし労働時間制の適用が否定された例-大まかにでも労働時間を把握できるようなら対象外
    on 2022年5月8日

    1.事業場外労働みなし労働時間制 労働基準法38条の2第1項は、 「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」 と規定しています。 これを事業場外労働時間みなし労働時間制といいます。 事業場外労働時間みなし労働時間制は、 「労働時間を算定し難いとき」 に用いられる仕組みです。 しかし、残業代…