新着記事

  • 離職理由を一身上の都合とする離職票の送付行為は解雇か?
    on 2023年1月31日

    1.退職勧奨か解雇か? 使用者側の「ある行為」がきっかけとなって労働者が出勤しなくなった場合、それが退職勧奨なのか解雇なのかが争われることがあります。 退職勧奨であれば、出勤していない事実は、退職の意思を態度によって示したものと理解されかねません。これが労働者の側の退職の意思表示と理解されてしまう場合、合意退職が認定され、地位の確認請求も不就労期間の賃金の請求も認められない可能性があります。 解雇であれば、出勤していない事実は、使用者側による労務提供の受領拒絶の結果として理解されます。解雇に理由がない場合、労働者は労働契約上の地位の確認を求めたり、不就労期間中の賃金を請求したりすることができま…

  • 固定残業代の合意-合計支給額が上がっても残業代以外の賃金が下がる場合、書面を取り交わすだけではダメ
    on 2023年1月30日

    1.自由な意思の法理 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無につい…

  • 書面に「割増し分含む」との記載があり、固定残業代の説明をしたとの証言があっても、固定残業代の合意が否定された例
    on 2023年1月29日

    1.固定残業代の有効要件 最一小判令2.3.30労働判例1220-5 国際自動車(第二次上告審)事件は、固定残業代の有効要件について、 「通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である・・・。そして、使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書…

  • アカデミックハラスメント-学生に対するハラスメントの懲戒事由該当性が否定された例
    on 2023年1月28日

    1.アカデミックハラスメント 大学等の教育・研究の場で生じるハラスメントを、アカデミックハラスメント(アカハラ)といいます。 セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントとは異なり、法令上の概念ではありませんが、近時、裁判例等で扱われることが多くなってきています。職務上、大学教員・大学職員の方の労働問題を取り扱うことが多いことから、個人的に関心を持っている領域の一つです。 アカデミックハラスメントの特徴は、職場の同僚間、上司-部下の間だけではなく、学生との関係でも問題になることです。 学生に対するアカデミックハラスメントの成否を検討するにあたっては、パワーハラスメントで…

  • 部下(学科教員)から上司(学科長)に対するパワーハラスメントの否定例
    on 2023年1月27日

    1.部下から上司に対するパワーハラスメント パワーハラスメントとは、 職場において行われる ① 優越的な関係を背景とした言動であって、 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 ③ 労働者の就業環境が害されるものであり、 ①から③までの要素を全て満たすものをいう とされています(令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」参照)。 このうち①の「優越的な関係」とは、上司と部下のような関係が典型です。 しかし、部下から上司に対する言動も、パワーハラスメントに該当しないわけではありません。例えば…

  • 古いハラスメント行為を懲戒事由とすることが否定された例
    on 2023年1月26日

    1.ハラスメントに対する意識の高まりの反作用 令和2年6月1日、 「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(労働施策総合推進法30条の2第1項) などの法文を含む改正労働施策総合推進法が施行されました。 こうした法改正の影響もあり、パワーハラスメントに対する意識は年々深まりを見せ、従前よりも随分、被害の予防、被害者保護が図られるようになっています。 しか…

  • 安全配慮義務違反を問題にするうえでの労働時間性-在校時間を要素として労働時間をカウントした例
    on 2023年1月25日

    1.労働時間概念の相対性 行政解釈上、労災認定の可否を判断するうえでの労働時間は、労働基準法上の労働時間と同義であるとされています(令和3年3月30日 基補発 0330 第1号 労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について参照)。 しかし、裁判例が必ずしも労働者災害補償保険法上の労働時間と労働基準法上の労働時間とを同義として理解していないことは、このブログで折に触れてお伝えしてきたとおりです。 それでは、長時間労働を理由に安全配慮義務違反を問題にする脈絡での労働時間と労働基準法上の労働時間の概念上の異同は、どのように理解されるのでしょうか? 安全配慮義務違反を問題にするうえでの労働時…

  • 管理職が声掛けなどをするのみで抜本的な業務負担軽減策を講じなかったとして安全配慮義務違反が認められた例
    on 2023年1月24日

    1.部下の長時間労働とSOSのサイン 労働者が長時間労働で精神障害を発症するに至るまでの間には、SOSのサインが出されていることが少なくありません。深刻な労働災害は、こうしたSOSのサインに対し、管理職が真摯に向き合わないことから発生します。 近時公刊された判例集にも、労働者から断続的にSOSのサインが発せられていたにもかかわらず、管理職が声掛けなどをするのみで御座なりな対応をとったことが安全配慮義務違反に該当すると判示された裁判例が掲載されていました。大阪地判令4.6.28労働経済判例速報2500-3 大阪府事件です。 2.大阪府事件 本件で被告になったのは、A1高校(本件高校)を設置する地…

  • ミスをして使用者の指示通りの仕事ができなかった時間の労働時間性
    on 2023年1月23日

    1.人間の活動である以上、不可避的に発生する誤りや遅れ 一般論として、使用者から特定の業務を命じられたにも関わらず、就労を拒否したり、故意に他の業務に従事したりすれば、その時間に相当する賃金を得ることは困難です。労働契約上の本旨に従った労務提供がされたとはいえないからです。 しかし、過失による誤りや遅れから、使用者が指示した業務に従事できなかった場合はどうでしょうか? この場合も、使用者の指示通りの仕事がされていないという結果だけを見れば、職場放棄・職務放棄をした場合と大差ありません。 しかし、どれだけ注意を払っていたとしても、人間の活動である以上、仕事に誤りや遅れが発生することは避けられませ…

  • 労働者派遣:雇用禁止合意(雇用制限条項)を許容するための「正当な理由」の具体的判断例
    on 2023年1月22日

    1.労働者派遣における雇用禁止合意 労働者派遣法33条は、1項で、 「派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者・・・又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。」 と、2項で、 「派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない。」 と規定しています。 簡単に…