- ハラスメントを立証する場面で、秘密録音の総件数を明らかにするのか?on 2024年9月13日
1.秘密録音の証拠価値 録音はハラスメントを立証する有力な証拠になります。 しかし、録音されていると分かっていながらハラスメントを行う人は、それほど多くはありません。そのため、ハラスメントの証拠を録音しようと思った場合、基本的には秘密録音(相手方に録音していると告げないで録音すること)を試みることになります。 そして、ハラスメントを問題にする訴訟では、このようにして取得した秘密録音を証拠として提出して行くことになります。 しかし、相手方に秘密で録音しているわけですから、それこそ毎日のようにハラスメントが行われていたようなケースを除き、常に不穏当な言動を記録できるわけではありません。 それでは、…
- ラーメン店の従業員共同の休憩室で行われた500件以上に渡る秘密録音の一部録音の証拠能力on 2024年9月12日
1.秘密録音の証拠能力 録音はハラスメントを立証する有力な証拠になります。 しかし、録音されていると分かっていながらハラスメントを行う人は、それほど多くはありません。そのため、ハラスメントの証拠を録音しようと思った場合、基本的には秘密録音(相手方に録音していると告げないで録音すること)を試みることになります。 秘密録音で証拠を確保した場合、しばしば相手方から、 違法収集証拠に該当するため、証拠から排除されるべきである(証拠能力が認められるべきではない) というクレームが出されます。 この種のクレームの採否の問題として、以前、歯科医院のスタッフ控室に録音機を設置して得られた録音に証拠能力が認めら…
- 労働者が承諾していたとしても、第三者名義の口座に支払われた賃金は、賃金の支払とは認められないとされた例on 2024年9月11日
1.賃金直接払の原則 労働基準法24条1項は、 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」 と規定しています。 本文で直接労働者に支払わなければ…
- 休職からの復職-元の部署に折り合いの悪い上司がいることは、復職要件との関係で、どのように考えられるか?on 2024年9月10日
1.人間関係からメンタルヘルスが崩れた休職者の復職 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要があります。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕479頁参照)。 しかし、ここで一つ問題があります。 人間関係から心の健康状態に問題が生じ、休職に至った方の復職の可否をどのように考えるのかという問題です。 典型的にはパワーハラスメントですが、人間関係上の問題でメンタルヘルスを崩してしまった方の場合、 ストレス因となる人がいない環境では普通に働けるまで…
- 休職からの復職-段階的に元へ戻す配慮などのプロセスを経れば、最終的に従来と同様の担当業務を行う見込みがあれば足りると判断された例on 2024年9月9日
1.休職期間満了日時点で「治癒」していることは必須か? 休職している方が復職するためには、傷病が「治癒」したといえる必要があります。 ここでいう「治癒」とは「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したこと」をいいます(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕479頁参照)。 しかし、休職期間満了時点で「治癒」の状態に至っていなければ、直ちに自然退職や解雇が正当化されるかといえば、そういうわけでもありません。 例えば、 東京地判昭59.1.27労働判例423-23エール・フランス事件は、 「申請人を他の課員の協力を得て当初の間はドキュメンティストの業務の…
- 孤立防止義務が否定された例on 2024年9月8日
1.孤立防止義務 以前、 ハラスメントがなくても職場環境廃配慮義務違反(職場環境調整義務違反)が認められるとされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ という記事の中で、千葉地判令4.3.29労働経済判例速報2502-3 甲社事件を紹介しました。 この裁判例は、ショーの出演者であった原告との関係で、 「被告は、他の出演者に情報を説明するなどして職場の人間関係を調整し、原告が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務を負っていたということができる。ところが、被告は、この義務に違反し、職場環境を調整することがないまま放置し、それによて、原告は周囲の厳しい目にさらされ…
- 解雇の効力を争う時には、就業規則の文言に即した主張立証を意識することon 2024年9月7日
1.解雇権濫用法理にみられる解雇要件を加重している就業規則? 労働契約法16条は、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 と規定しています。 これは解雇権濫用法理と呼ばれていた判例法理を条文化したもので、解雇の可否は、基本的に、この条文に沿って判断されます。 しかし、就業規則の解雇事由を参照すると、 解雇理由を法所定のものよりも加重しているのではないか? と思われることがあります。以前にも似たような話はしましたが、こうした事例では、客観的合理性・社会的相当性という枠組みよりも、就業規則の文言に即した主張、立…
- 逮捕・勾留された場合、有給休暇でしのぎ切れるか?on 2024年9月6日
1.逮捕・勾留された場合の職場対応 逮捕・勾留されると、一定期間、身体拘束を受けることになります。当たり前ですが、身体拘束を受けると、職場に出勤することができなくなります。そのため、仕事を持っている人は、逮捕・勾留された場合、職場との関係をどのように折り合いをつけるのかが問題になります。 逮捕・勾留されていることを知らせると、被疑事実が私生活上の出来事であったとしても、職場から何等かの処分を受ける可能性があります。冤罪を主張する場合であったとしても、職場から色眼鏡で見られることになるかも知れません。 しかし、職場に対して何の連絡もとらないと、それはそれで無断欠勤として処分・解雇される危険性があ…
- 昇給区分決定は不利益処分として審査請求や取消訴訟の対象になるか?on 2024年9月5日
1.公務員の給与が決定される仕組み 国家公務員は、勤務成績に基づいて5段階の昇給区分(A~E)が決定され、昇給区分に応じた号俸数昇給するという仕組みがとられています。 人事評価と評価結果の活用 この昇給区分を査定することを「昇給区分決定」といいます。 地方公務員の昇給についても、似たような仕組みがとられています。 地方公務員の給与の体系と給与決定の仕組み 以前、このブログでこの昇給区分決定の適法性を争うにあたり、公法上の当事者訴訟という訴訟類型を活用できる可能性があることをお話しました。 確認訴訟(公法上の当事者訴訟)の活用方法-特定の「級」と「号給」にあることの確認を求めることは可能か? -…
- 上司の指示・確認のもとで違法行為をしたことは、処分の軽減事由になるのか?on 2024年9月4日
1.上司の指示で行われた不正行為 不正行為の責任を問われて懲戒処分を受ける人の中には 「上司からの指示で仕方がなかった」 という弁解をする人がいます。 しかし、この種の主張が通った例は、あまり見たことがありません。 理由は二つあります。 一つ目は立証が困難であることです。 上位者が自分の手を汚さず、第三者に不正を指示するのは、いざとなったら切り離して保身を図るためです。保身を図りたいのに巻き添えを食っては意味がありません。そのため、人に不正行為を指示する場合、証拠が残らないような形がとられるのが普通です。多義的な暗喩や婉曲表現が用いられたり、口頭で簡単なやりとりがされるだけであったり、色々なパ…