新着記事

  • 小規模事業体で管理監督者はありえるか?-管理監督者を置く「必要性」
    on 2021年10月23日

    1.管理監督者性 管理監督者には、労働基準法上の労働時間規制が適用されません(労働基準法41条2号)。俗に、管理職に残業代が支払われないいといわれるのは、このためです。 残業代が支払われるのか/支払われないのかの分水嶺になることから、管理監督者への該当性は、しばしば裁判で熾烈に争われます。 管理監督者とは、 「労働条件その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」 という意味であると理解されています。そして、裁判例の多くは、①事業主の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権限を有していること(経営者との一体性)、②自己の労働時間についての裁量を有していること(労働時間の裁量)、③管理監督…

  • 病気療養休暇中に連絡がつかなかったことを理由とする雇止めが否定された例
    on 2021年10月22日

    1.病気療養・休職中の労働者に対する使用者の視線 残念ながら、私傷病等で休職している労働者に対しては、温かな視線を向ける使用者ばかりではありません。形のうえでは復職に向けた仕組みが整えられていたとしても、休職中に使用者から退職を示唆される労働者は少なくありません。その中には、休職期間中、会社との疎通が十分ではなかったことを理由に、解雇されたり、雇止めにされたりする事例も散見されます。 会社からの連絡に応じなかった事実は、無断欠勤と同様、分かりやすい形で記録化されていることが多く、しばしば使用者からの苛烈な非難の対象になります。 それでは、休職期間中に、会社からの連絡に応じなかったことは、解雇や…

  • 65歳を超える高齢者であっても、契約更新の合理的期待が認められるとされた例
    on 2021年10月21日

    1.雇止めと契約更新の合理的期待 有期労働契約は、期間の満了により消滅するのが原則です。 しかし、労働契約法19条は2号は、労働者において、 「有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」(合理的期待が認められる) 場合、使用者が有期労働契約の更新の申込みを拒絶するためには、 「客観的に合理的な理由」 と 「社会通念上相当である」こと が必要であると規定しています。 客観的合理的理由や社会通念上の相当性が認められない場合、どうなるかというと、使用者が更新の申込みを拒絶できない結果、労働者の契約更新の申込により、…

  • 公務員の懲戒処分-2万円に満たない公務外窃盗で880万円以上の退職手当が全部不支給とされた例
    on 2021年10月20日

    1.退職手当の支給制限処分 国家公務員退職手当法12条1項は、 「退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支払を受ける権利を承継した者)に対し、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる。」 「一 懲戒免職等処分を受けて退職をした者」 と規定しています。 そして…

  • 公務員の懲戒処分-窃盗:被害額が少なくても免職になりえる
    on 2021年10月19日

    1.懲戒処分の量定基準 平成12年3月31日職職-68(懲戒処分の指針について)は、公務外での窃盗について、 「他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。」 と規定されています。 こうした規定ぶりをみると、比較的被害額の少ない軽微な窃盗については、停職に留められそうにも思われます。 しかし、裁判例で争われる事案を見ると、話はそう単純ではありません。被害額が少額に留まっていても、懲戒免職になる事案はあります。近時公刊された判例集に掲載されている大阪地判令3.6.30労働判例ジャーナル115-26 大阪府・府教委事件も、そうした事案の一つです。 2.大阪府・府教委事件 本件で原告になったのは…

  • 自由な意思の法理の適用例-謝罪のメール・始末書の存在は必ずしも「自由な意思」の根拠にならない
    on 2021年10月18日

    1.自由な意思の法理 平成28年2月19日、最高裁は、賃金や退職金を不利益に変更する合意の効力について、次のとおり判示しました(最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件)。 「労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり、このことは、就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても、その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、異なるものではないと解される(労働契約法8条、9条本文参照)。もっとも、使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け…

  • 機密保持の合意と不正競争防止法上の営業秘密-使用者側からの反訴請求に対する防御方法
    on 2021年10月17日

    1.労働時間立証に用いる資料の持ち出しへの攻撃 使用者には、労働時間を適正に把握するなど、労働時間を適切に管理する責務があります(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」参照)。また、労働安全衛生の見地から、労働者の労働時間をタイムカード等の客観的方法によって把握する義務もあります(労働安全衛生法66条の8の3、労働安全衛生規則52条の7の3参照)。しかし、こうした責務・義務が適切に履行されていないケースは、少なくありません。 タイムカード等による労働時間管理が行われていない場合、時間外勤務手当等(いわゆる残業代)を請求しようとする労働者としては、代…

  • 公務員の飲酒運転-懲戒免職処分を争うことの難しさが分かる例
    on 2021年10月16日

    1.公務員の懲戒処分 国家公務員の懲戒処分について、人事院は、 平成12年3月31日職職-68「懲戒処分の指針について」 という文書を発出しています。 懲戒処分の指針について これは、非違行為の類型毎に、目安となる懲戒処分を示したものです。 「懲戒処分の指針について」では、飲酒運転について、 「酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。」 と規定しています。 これによると、酒酔い運転をした職員に対しては、人の死傷の結果が生じていない限り、「免職又は停職」のいずれかの処分が選択されることになります。 多くの地方公共団体は「…

  • 公務員の飲酒運転-懲戒免職処分は適法とされたものの、退職手当全部不支給処分は違法とされた例
    on 2021年10月15日

    1.懲戒免職処分と退職手当全部不支給処分との関連性 公務員の場合、懲戒免職処分と退職金不支給処分とが連動する仕組みがとられています。 国家公務員の場合、退職金の支給/不支給の判断は、国家公務員退職手当法という法律に基づいて行われます。 国家公務員が懲戒免職処分等を受けた場合、退職手当管理機関は、一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができると規定しています(国家公務員退職手当法12条1項)。 この国家公務員退職手当法には、運用方針が定められており、懲戒免職処分等を受けた国家公務員に対しては、 「非違の発生を抑止するという制度目的に留意し、一般の退職手当等の全部を支給…

  • 自己判断での通院の中断が労災認定に与える影響
    on 2021年10月14日

    1.精神障害の労災認定 精神障害の労災認定について、厚生労働省は、 平成23年12月26日 基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(最終改正:令和2年8月21日 基発0821第4号) という基準を設けています。 精神障害の労災補償について|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000661301.pdf この基準は、 対象疾病を発病していること、 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること、 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと、 の三つの要件が満たされる…