新着記事

  • 休職期間の終期に関する問い合わせを受けた使用者には、雇用契約に付随する義務として、その終期を教示すべき義務があるとされた例
    on 2025年12月15日

    1.休職制度 休職とは「ある従業員について労務に従事することが不能又は不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対して労働契約関係そのものは維持させながら、労務への従事を免除すること又は禁止すること」をいいます(佐々木宗啓ほか『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕468頁参照)。 休職事由には様々なものがありますが、比較的普及している仕組みとして私傷病休職があります。私傷病休職制度は、一定期間内に治癒すれば復職し、治癒しなければ自然退職(あるいは解雇)となるという形で設計されているのが一般です。 私傷病休職に入った労働者にとって、終期が何時なのかは重大な関心事となりま…

  • 在職中に問題視していなかった経費支出を退職後に不正支出だと問題視することが否定された例
    on 2025年12月14日

    1.退職をめぐるトラブル 辞意を申し入れた労働者に対し、強い悪感情をぶつけてくる使用者がいます。 こうした使用者からは、しばしば、在職中の問題行動を理由とする損害賠償を示唆されます。その中には、何ら問題とはいえない行動に対して因縁をつけているとしか思えないものも散見されます。 近時公刊された判例集にも、在職中に問題視していなかった経費の支出について、経費の私的利用だと言い出し、使用者が退職した労働者に損害賠償請求訴訟を提起した裁判例が掲載されていました。東京地判令7.7.15労働判例ジャーナル164-16粂川工業事件です。 2.粂川工業事件 本件で原告(控訴人)になったのは、ダイニングバー、レ…

  • 長年に渡り慣行化していた不適切行為は、体制見直しやそれを踏まえた注意指導がなければ懲戒事由として扱うことは相当でないとされた例
    on 2025年12月13日

    1.長年に渡り慣行化していた不適切行為 懲戒処分を受けた労働者の方から法律相談を受けていると、 長年に渡り行われてきたもので、特に不適切な行為とは思わなかった、 不適切だとは思っていたが、代々の担当者がずっと行ってきたことで、自分だけ処分されるのは納得できない、 などと処分に対する思いを口にされる方がいます。 確かに、長年に渡って同じことをしてきたにもかかわらず、唐突にその人だけ処分されるというのは平等性の観点から疑義があります。 こうした労働者側の主張に対する裁判所の姿勢は、大きく二つに分かれます。 一つは、歴代の担当者も処分されるに値することをしてきたのであって、たまたま歴代の担当者が処分…

  • 特別養護老人ホームの看護師が入所者を「ちゃん」付けで呼んだことが懲戒事由に該当するほど不適切であるとは評価できないとされた例
    on 2025年12月12日

    1.「ちゃん」付けと高齢者虐待 令和7年3月 厚生労働省 老健局『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について』は、 養介護施設従事者等による高齢者に対する心理的虐待の例として、 「子ども扱いするような呼称で呼ぶ」 ことを挙げています。 市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(国マニュアル)|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001452977.pdf この「子ども扱いするような呼称」の一つとして挙げられるのが「ちゃん」付けです。幾つかの自治体では、「ちゃん」付けを高齢者虐待、あるいは、虐待の萌…

  • ハラスメント行為を基礎付ける具体的な事実関係を認めるに足りないとして准教授から助手への降任降格が無効とされた例
    on 2025年12月11日

    1.学生等に対するハラスメント 近時、大学教員の方が、学生等に対するハラスメントを理由に懲戒処分を受ける例が増えているように思います。ハラスメントに対する意識の高まりや、少子化により学生側の立場が強くなったことなどが背景にあるのではないかと推測されます。 当事務所にも、ハラスメントの疑いとかけられて調査の対象になっている/ハラスメントを理由に処分を受けたという相談が相当数寄せられています。こうした相談を受けていて感じることの一つに、具体的な嫌疑が明らかにされないという問題があります。 懲戒処分の効力を争って訴訟を提起すれば、使用者である大学当局の側で懲戒事由を構成する具体的事実を特定し、その事…

  • 未成年の無知識・未経験の労働者であったことから、非常に危険な行為がされていても過失相殺割合が15%にとどまった例
    on 2025年12月10日

    1.過失相殺 民法418条は 「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」 と規定しています。 民法722条2項は、 「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」 と規定しています。 こうした規定に基づいて、権利者側・被害者側の責任を斟酌して損害賠償額を調整することを「過失相殺」といいます。 民法418条は安全配慮義務違反など債務不履行を理由とする損害賠償請求で、民法722条2項は不法行為に基づく損害賠償請求で適用されています。 死亡や重篤な行…

  • 多重請負関係会社が若年労働者に対して負う安全配慮義務-元請事業者の場合
    on 2025年12月9日

    1.多重請負構造と未成年労働者 建設業等の現場仕事では、しばしば多重請負構造が見られます。 発注者⇒元請⇒一次下請⇒二次下請⇒・・・といったようにです。 この多重請負構造に個人事業主が組み込まれたり、派遣労働者が組み込まれたりしている例もあり(建設業務についての労働者派遣は労働者派遣法4条1項2号で違法とされていますが)、現場仕事をめぐる法律関係は混迷を極めていることが少なくありません。法律関係の錯綜は、責任の所在を不明確にさせ、深刻な事故に繋がることがあります。 また、現場作業には、未成年者などの若年労働者が働いていることもあります。錯綜した法律関係のもと、碌に安全教育設けていない子どもが深…

  • 多重請負関係会社が若年労働者に対して負う安全配慮義務-直接指揮監督者(雇用関係なし)の場合、安全衛生責任者の場合
    on 2025年12月8日

    1.多重請負構造と未成年労働者 建設業等の現場仕事では、しばしば多重請負構造が見られます。 発注者⇒元請⇒一次下請⇒二次下請⇒・・・といったようにです。 この多重請負構造に個人事業主が組み込まれたり、派遣労働者が組み込まれたりしている例もあり(建設業務についての労働者派遣は労働者派遣法4条1項2号で違法とされていますが)、現場仕事をめぐる法律関係は混迷を極めていることが少なくありません。法律関係の錯綜は、責任の所在を不明確にさせ、深刻な事故に繋がることがあります。 また、現場作業には、未成年者などの若年労働者が働いていることもあります。錯綜した法律関係のもと、碌に安全教育設けていない子どもが深…

  • 多重請負関係会社が若年労働者に対して負う安全配慮義務-直接雇用者の場合、事実上の派遣元の場合
    on 2025年12月7日

    1.多重請負構造と未成年労働者 建設業等の現場仕事では、しばしば多重請負構造が見られます。 発注者⇒元請⇒一次下請⇒二次下請⇒・・・といったようにです。 この多重請負構造に個人事業主が組み込まれたり、派遣労働者が組み込まれたりしている例もあり(建設業務についての労働者派遣は労働者派遣法4条1項2号で違法とされていますが)、現場仕事をめぐる法律関係は混迷を極めていることが少なくありません。法律関係の錯綜は、責任の所在を不明確にさせ、深刻な事故に繋がることがあります。 また、現場作業には、未成年者などの若年労働者が働いていることもあります。錯綜した法律関係のもと、碌に安全教育設けていない子どもが深…

  • 合理的配慮の提供義務が、分限免職処分の可否の判断基準に取り入れられた例
    on 2025年12月6日

    1.合理的配慮の提供義務 障害者雇用促進法36条の3は、 「事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となつている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。」 と規定しています。この条文は、一般に障害者に対する「合理的配慮の提供義務」を定めたものだと理解されています。 昨日ご紹介した、東京地判令5.12.18 国…