新着記事

  • 人事権の行使としての降格と懲戒処分としての降格はどのように区別されるのか
    on 2022年8月7日

    1.人事権の行使としての降格/懲戒処分としての降格 降格とは、 「役職(職位)または職能資格・資格等級を低下させること」 をいい、 人事権の行使としてのものと、 懲戒処分としてのもの とがあると理解されています(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、初版、令元〕485頁参照)。 人事権の行使としての降格と、懲戒処分としての降格とは、法的性質が異なっており、その有効要件も全く異なります。一般論として言うと、人事権の行使としての降格の方が、使用者の裁量が尊重され、有効になりやすく、懲戒処分としての降格の方が、厳格な司法審査に服し、無効になりやすい傾向にあります。 そのため、事前手続がラフで、…

  • 従業員(労働者)である上司に残業代不払を発生させない責任はあるか
    on 2022年8月6日

    1.残業代不払を理由とする個人責任の追及 株式会社の取締役は、会社に対する善管注意義務ないし忠実義務として、会社に労働基準法24条及び37条を遵守させ、労働者に対して割増賃金(残業代)を支払わせる義務を負っていると理解されています(東京地判令3.8.31労働判例ジャーナル118-60 損害賠償等請求事件参照)。 そのため、何等かの理由で会社が労働者に残業代を支払うことができず、労働者の損害が顕在化した場合、任務懈怠に悪意・重過失のある取締役は、労働者個人に対する損害賠償義務を負うことになります(会社法429条1項参照)。 それでは、取締役の一歩手前で残業代の不払の発生に関与した労働者である上司…

  • 休めといっても休まなかったでは通用しない-長時間労働で部下に精神障害(労災)を発症させた上司の責任
    on 2022年8月5日

    1.健康確保の観点からの労働時間を適正に把握・管理する義務 労働安全衛生法66条の8の3は、 「事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。」 と規定しています。 「第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導」というのは、要するに医師による面接指導のことです。 また、「厚生労働省令で定める方法」とは「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」を意味します(労働安全衛…

  • なしくずし的に業務に従事していた場合に雇用契約の成否を考えるうえでの着眼点
    on 2022年8月4日

    1.労働契約の成否は必ずしも明確ではない 民法623条は、 「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」 と規定しています。つまり、労働契約の典型である雇用契約が成立したといえるためには、必ずしも書面を作成することが求められているわけではありません。労働契約法4条2項が、 「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。」 と規定していることからも分かるとおり、労働契約書・雇用契約書の作成は、飽くまでも努力義…

  • 弁明は態度に注意する
    on 2022年8月3日

    1.懲戒処分と弁明の機会付与 労働契約法15条は、 「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」 と規定しています。 この客観的合理的理由・社会通念上の相当性を考える上での重要な考慮要素の一つに弁明の機会を付与したことがあります。論者により多少の認識の相違はありますが、水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、初版、令元〕559頁には、 「被処分者に懲戒事由を告知して弁明の機会を与える…

  • 正当な苦情とカスタマーハラスメントの区別
    on 2022年8月2日

    1.カスタマーハラスメント 企業で働く従業員に対する顧客からの嫌がらせを「カスタマーハラスメント」といいます。クレームに疲弊する人が増えてきたことを受け、数年前から注目されている概念です。 法令上、カスタマーハラスメントは、令和2年厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」という文書の中に位置づけられています。 具体的に言うと、この指針には、 「事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴…

  • 条件付での有休休暇取得の可否-他の休暇が認められない場合には有給休暇を取得すると主張できるのか?
    on 2022年8月1日

    1.年次有給休暇と法定外の有給休暇 労働基準法39条は、一定期間、一定割合以上出勤した労働者に対し、年次有給休暇を取得する権利を付与しています。年次有給休暇は労働者の指定した時季に付与しなければならず、使用者には「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ、時季を変更することが認められているに留まります(労働基準法39条5項)。 この労働基準法で定められた年次有給休暇とは別に、企業が福利厚生の一環として、任意に有給での休暇制度を設けていることがあります。こうした法定外有給休暇制度は、法律の枠外にあるため、どのような権利であるのかは、各企業の制度設計に委ねられています。 有給休暇は法律に根拠のある強力…

  • 法定外の有給休暇の取得の仕方が問題視されて解雇された例
    on 2022年7月31日

    1.年次有給休暇と法定外の有給休暇 労働基準法39条は、一定期間、一定割合以上出勤した労働者に対し、年次有給休暇を取得する権利を付与しています。年次有給休暇は労働者の指定した時季に付与しなければならず、使用者には「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ、時季を変更することが認められているに留まります(労働基準法39条5項)。 この労働基準法で定められた年次有給休暇とは別に、企業が福利厚生の一環として、任意に有給での休暇制度を設けていることがあります。こうした法定外有給休暇制度は法律の枠外にあるため、どのような権利であるのかは、各企業の制度設計によることになります。 しかし、この法定外有給休暇を年…

  • 受診命令への対応-自分の選んだ医師の診断書で代用できるか/受診だけではなく検査や治療まで必要か
    on 2022年7月30日

    1.受診命令 メンタルヘルスに問題があるのではないかと疑われ、医師の診断を受けるように命令されることがあります。 もし病気だと診断されたら不利なレッテルを貼られてしまうのではないかという思いから、受診命令に応じて医療機関を受診することに抵抗を覚える方は少なくありません。 受診命令を受けた場合の対応について言うと、何か余程特殊な事情でもない限り、従っておいた方がいいように思われます。病気であった場合、診断が行われることは、心身の不調から回復する契機となります。また、病気でないことが分かれば、その結果を使用者に提出し、大手を振って従前通り働くことができます。しかし、受診命令を拒否していると、病的な…

  • 独り言に注意-意外と使用者は記録化している
    on 2022年7月29日

    1.案外問題になる独り言 仕事中に独り言をつぶやく方がいます。 物理的に他人に害を与える行為ではないためか、甘く見ている方は少なくない印象がありますが、裁判例でもしばしば問題になります。 どのような形で問題になることが多いのかというと、精神疾患・メンタルヘルスとの関係です。独り言をブツブツと言いながら仕事をしていると、言っている本人の認識はともかく、周囲からは奇異に思われます。結果、職場で浮いてコミュニケーション能力不足を理由に退職勧奨を受けたり、精神科への受診命令を出されたりします。実際に病気が背景にあることも少なくないため、受診命令の適否に関しては一概に判断できませんが、大抵の労働者はこの…