新着記事

  • 交渉段階で就業規則の開示を拒絶したことが、就業規則の周知性を否定する一事情とされた例
    2026年8月16日 に

    1.就業規則の開示 どのような類型の事件であったとしても、労働事件は労働契約の内容を確認するところから始まります。 労働契約の内容は、労働条件通知書や雇用契約書、そして、就業規則を確認することによって把握します。就業規則には周知義務があり(労働基準法106条)、周知された就業規則は基本的には労働契約の内容になるからです(労働契約法7条)。 就業規則は従業員一般に広く周知されている文書であり、不正競争防止法上の営業秘密に該当する類の情報ではありません。しかし、社外への持ち出しは制限されているのが通例です。そのため、労働者側で労働事件を受任した弁護士は、使用者側に対し、先ず、就業規則の開示を求めて…

  • 減額幅40万円⇒37万円は重大な不利益であり、財務状況に関する具体的な資料等が提供されていないなどとして賃金減額同意の効力が否定された例
    2026年8月15日 に

    1.賃金減額の合意・同意に必要な「自由な意思」 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対す…

  • 特定の労働者を退職させる意図のもとでの就業規則における定年制の新設が無効とされた例
    2026年8月14日 に

    1.定年制の導入 高年齢者雇用安定法は、次のとおり規定しています。 「事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に『定年』という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。」(8条) 「定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下『高年齢者雇用確保措置』という。)のいずれかを講…

  • 臀部の痛みを訴える女性外国人労働者に対し、ズボンを下ろすよう求め、臀部全体を露出させた行為に違法性が認められた例
    2026年8月13日 に

    1.外国人労働者に対する処遇 外国人の労働事件であっても、適用される法律が日本法であれば、別段、それほど特殊な問題があるわけではありません。 しかし、外国人関係の事件を見ていると、日本人労働者に対しては先ずされないような非人道的な扱いを受けていることがあります。逃亡防止のために労働者からパスポートを預かって返さないといったようにです。 逃亡防止のため外国人労働者からパスポートを預かって返さないことが違法とされた例 - 弁護士 師子角允彬のブログ 外国人事件に特殊性があるとすれば、こうした非人道性があるかも知れません。 近時公刊された判例集にも、人道的な観点から問題と思われる処遇に不法行為該当性…

  • 実習実施者には技能実習生に対し快適な住環境を確保すべき不法行為法上の注意義務があるとされた例
    2026年8月12日 に

    1.外国人技能実習生の住環境 技能実習生は外国から日本にやってきます。当然、日本に住居を持っているわけではありません。そのため、住むところは、しばしば実習を実施する企業や監理団体が確保することになります。 この実習実施者や監理団体によって確保される住居の中には、かなり劣悪なものがあることが指摘されてきました。例えば、令和2年11月3日には、 「多いときは15人以上をタコ部屋に押し込めた」 相次ぐ‟外国人技能実習生犯罪”はなぜ起きるのか? | 文春オンライン という記事が掲載されています。 この外国人技能実習生に提供される住居との関係で、近時公刊された判例集に注目すべき判断を示した裁判例が掲載さ…

  • 外出の制限に違反した技能実習生に反省文を作成させたことが不法行為を構成するとされた例
    2026年8月11日 に

    1.私生活の制限 使用者といえど、労働者の私生活には干渉できないのが原則です。 しかし、 「職場外でされた職務遂行に関係のない所為であっても,企業秩序に直接の関連を有するもの,および,企業の社会的評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるものについては,企業秩序の維持確保のために規制の対象にすることが許される場合もありうる」 と理解されています(水町勇一郎『詳解 労働法』〔東京大学出版会、第3版、令5〕586頁参照)。私生活上の非行に対して懲戒権が行使されるのも、こうした考え方に基づいています。 ただ、当然のことながら、私生活上の自由に対する過度の制約・干渉は許されません。近時公…

  • 懲戒解雇の最後手段性が明確に示された例
    2026年8月10日 に

    1.懲戒解雇の最後手段性 懲戒解雇には「最後手段性」という原則があります。 色々な説明の仕方がありますが、土田道夫『労働契約法』〔有斐閣、第3版、令6〕631頁には、次のとおり書かれています。 「懲戒解雇は,労働者を『制裁』として企業外に排出しなければならないほどの労働者の重大な義務違反と企業秩序侵害の事実(業務阻害や職場規律上の実害の発生)がある場合にのみ発動できると解すべきである。具体的には,労契法15条の懲戒権濫用規制に即して,①懲戒解雇事由該当性の判断段階で,労働者の非違行為の程度や使用者の命令・規律の有効性を慎重に判断し(客観的合理的理由の存否),懲戒事由該当性が認められる場合も,②…

  • 対象行為の説明のない指導書交付・ヒアリングにどのように対処すべきか
    2026年8月9日 に

    1.対象行為の説明がされない問題 ハラスメントなどの非違行為で注意、指導等を受けるにあたり、対象行為が特定されないという問題があります。 具体的に言うと「クレームを生じさせた」「ハラスメント行為に及んだ」などと抽象的に書かれた注意・指導書への署名押印を求められたり、対象行為を明らかにしてもらえないままヒアリングに召喚されたりする問題です。 指導書に署名押印するのか否か、ヒアリングにどのような方針で臨むのかは、対象行為が分からなければ決めることができません。 使用者が述べている対象行為が非違行為と言われても仕方がないものであれば署名押印して改善の意思を示すことになりますし、ヒアリングでも反省の意…

  • 妊娠・出産・産前産後休業等を理由とする不利益取扱いの禁止に関する最高裁判決の射程は、育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止にも及ぶのか?
    2026年8月8日 に

    1.男女雇用機会均等法と育児介護休業法 男女雇用機会均等法9条3項は、 「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」 と規定しています。労働基準法65条は1項で産前休業を、2項で産後休業を規定しています。そのため、この条文は、妊娠、出産、産前産後休業の取得等を理由とする不利益取扱いを禁止するものと理解…

  • 育児休業を取得した店長を副店長として復帰させ、相当期間経過後も店長に就かせなかったことが違法とされた例
    2026年8月7日 に

    1.原職のポストに空きがない 育児介護休業法10条は、 「事業主は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出をいう。以下同じ。)をし、若しくは育児休業をしたこと又は第九条の五第二項の規定による申出若しくは同条第四項の同意をしなかったことその他の同条第二項から第五項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」 と規定しています。 この規定があるため、事業主は育児休業した労働者に対して不利益取扱いをすることができません。 何が不利益な取扱いに該当するかについては、 平成21年12月28日 厚生労…