新着記事

  • 合意退職の場面にも自由な意思の法理の適用が認められた例
    on 2026年1月19日

    1.自由な意思の法理の射程 最二小判平28.2.19労働判例1136-6山梨県民信用組合事件は、 「使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無…

  • 合意解約に応じていない労働者を退職したものとして取り扱ったことが、実質において解雇だとされた例
    on 2026年1月18日

    1.退職扱いの法的性質 解雇が行われるに先立っては、退職勧奨が行われるのが通例です。 使用者からの勧奨に応じて会社を辞める場合、労働契約は合意解約されたものと理解されます。しかし、労働者が退職に合意していないにもかかわらず、使用者によって一方的に退職手続がとられることもあります。 それでは、こうした一方的な退職扱いは、法的にはどのように理解されるのでしょうか? この問題を考えるにあたり参考になる裁判例が、近時公刊された判例集に掲載されていました。東京地判令5.1.16労働判例1341-152 ISS事件です。 2.ISS事件 本件で被告になったのは、情報システムに関するソフトウェア、ハードウェ…

  • 過酷な負担を負わせる競業避止契約の効力を一部有効として救済することが許されて良いのか?
    on 2026年1月17日

    1.退職後の競業避止義務を定める合意 会社と従業員との間で交わされる退職後の競業避止義務を定める合意の効力は、一般に、次のとおり理解されています。 「就業規則によって退職後の競業行為を禁止したとしても、退職後には労働者に職業選択の自由(憲22条)が保障されていることに照らし、その競業禁止規定の効力を無制限に認めることはできない。多くの裁判例は、①退職時の労働者の地位・役職、②禁止される競業行為の内容、③競業禁止の期間の長さ・場所的範囲の大小、④競業禁止に対する代償措置の有無・内容等を考慮し、合理的な範囲でのみ競業禁止の効力を認めている・・・。なお、最近の裁判例は、制限の期間、範囲を必要最小限に…

  • 月収約36万円+αの労働者に対し、1000万円の限度で競業違反の違約金を課することが有効とされた例
    on 2026年1月16日

    1.退職後の競業避止義務を定める合意 会社と従業員との間で交わされる退職後の競業避止義務を定める合意の効力は、一般に、次のとおり理解されています。 「就業規則によって退職後の競業行為を禁止したとしても、退職後には労働者に職業選択の自由(憲22条)が保障されていることに照らし、その競業禁止規定の効力を無制限に認めることはできない。多くの裁判例は、①退職時の労働者の地位・役職、②禁止される競業行為の内容、③競業禁止の期間の長さ・場所的範囲の大小、④競業禁止に対する代償措置の有無・内容等を考慮し、合理的な範囲でのみ競業禁止の効力を認めている・・・。なお、最近の裁判例は、制限の期間、範囲を必要最小限に…

  • 業務起因性の前提となる労働時間とは、労働基準法上の労働時間に限られるものではないとされた例
    on 2026年1月15日

    1.労働者災害補償保険法上の労働時間 労働時間の数は、労災認定が認められるのか否かと密接に関係しています。 例えば、 令和5年9月1日 基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は、 「極度の長時間労働、例えば数週間にわたる生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働は、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となることから、発病直前の1か月におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合等には、当該極度の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を『強』とする。」 と定めています。 この労働者災害補償保険法上の「労働時間」は、行政解釈上、…

  • 精神疾患の公務起因性の判断にあたり、労災認定基準に示された知見をも斟酌し得るとした最高裁裁判官補足意見
    on 2026年1月14日

    1.公務災害 労働者災害補償保険制度の公務員版に、国家公務員災害補償制度、地方公務員災害補償制度があります。国家公務員災害補償制度は国家公務員災害補償法に、地方公務員災害補償制度は地方公務員災害補償法に根拠があります。 労働者災害補償保険法に基づく保険給付を受けるにあたっては、疾病や負傷が業務に起因している必要があります。 これに対し、国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法に基づいて補償を受けるためには、疾病や負傷が公務に起因している必要があります。 業務起因性と公務起因性の判断基準は似通ってはいるのですが、文言が完全に一致しているわけではありません。また、改正の時期にもズレがあるため、医…

  • マニュアル等を通じたコントロールが労働力に対する業務遂行上の指揮監督とは異なるとされた例
    on 2026年1月13日

    1.労働者性の判断基準 労働法の適用を受けないようにするため、業務委託や請負といった法形式が使われることがあります。 しかし、こうした法形式を使いさえすれば適用を免れることができるとなると、労働法で定められているルールは意味がなくなってしまいます。 そのため、業務委託契約や請負契約を締結して働いている人であっても、実体として労働者といえるような働き方をしている場合、労働法が適用されると理解されています。 そうなると、業務委託契約や請負契約のもとで働いている人が労働者なのか否かを判断するための基準が必要になります。これが、 「昭和60年12月19日 厚生労働省 労働基準法研究会報告『労働基準法の…

  • 休職を要する健康状態にある場合、主治医への事情確認に協力するか?
    on 2026年1月12日

    1.解雇回避措置としての休職命令 私傷病休職制度がある場合に、休職制度を利用することなく行われた解雇の効力をどのように理解すべきかという論点があります。 佐々木宗啓ほか『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ』〔青林書院、改訂版、令3〕470-471頁は、 「病休職制度がある場合に同制度を利用することなく解雇したその一事をもって、当該解雇が無効とはならないであろう」 としつつも、 「治ゆの見込みがないことが明らかなケースはともかく、使用者が、労働者に休職制度を適用すれば治ゆする見込みがないとはいえないのに、これを適用せずに労働者を解雇した場合には、解雇権の濫用として無効とされる可能性が高い」 と記述して…

  • 勤務先に抗議する時の留意点-ある不満について文書を提出する一方、明示的に異議を述べていなかったことが事実認定上労働者の不利に理解された例
    on 2026年1月11日

    1.古い事件でも掘り起こせる場合/掘り起こせない場合 過去にも言及したことがありますが、古い事件を掘り起こすのは基本的には困難です。例えば、かなり問題のある解雇であったとしても、解雇から何年も経過してしまうと、訴訟提起しても思わしい結果には繋がらないことが多いように思います。 しかし、労働事件においては、例外的に掘り起こせることもあります。 例えば、約8年前の固定残業代の導入(賃金の不利益変更)との関係で、 「被告は、本件変更後、長年にわたり従業員らからクレームを受けたことはなかったから、当該変更につき従業員らによる承諾又は追認がされた旨主張する。しかし、一般に労働者が使用者に使用されてその指…

  • 非がある場合の解雇の争い方-何ら反省すべき点はない旨の供述が改善可能性の欠如の理由とされた例
    on 2026年1月10日

    1.解雇紛争と労働者の帰責性 大雑把に言うと、解雇は、 ① 整理解雇など労働者に全く問題のない場合、 ② 大なり小なり何等かの問題があること自体は否定できない場合、 に分けられます。 労働者に問題がないからといって、直ちに解雇が無効となるわけではありません。整理解雇法理という厳格な要件はありますが、解雇は有効になることもあります。 他方、労働者に問題があったとしても、直ちに解雇が有効になるわけではありません。解雇が認められるためには、問題が「客観的に合理的な理由」といえるだけの重大なものである必要があります。また、ある程度重大な事由があったとしても、解雇という措置に踏み切ることが「社会通念上相…