休憩を十分に取ることができなかったとの労働者の主張が認められた例

1.休憩時間とされている時間にも働いていた場合

 残業代請求訴訟で争点化しやすい問題の一つに、休憩時間の労働時間性があります。

 これは要するに、

休憩とされている時間にも働いていた、

という主張です。

 しかし、休憩時間に働いていたことの立証は、必ずしも容易ではありません。

 その理由の一つが、タイムカード等の客観的記録に現れないことです。

 概ねの会社では、

始業するにあたりタイムカードを打刻し、

働き、

休憩し、

また働き、

そして終業時にタイムカードを打刻して帰ります。

 休憩時間は「〇時から〇時まで」といったように事業場毎に定められており、休憩に入る時や休憩を終えた時にまで一々タイムカードを押すことはありません。そのため、休憩時間のうち何時から何時まで働いていたのかは、厳密に特定できないケースが殆どです。

 具体的な時刻を特定できない場合、概括的な主張、立証に頼らざるを得ませんが、これには残業代請求訴訟で概括的な認定を勝ち取るのと同じ位の難易度があります。

 このような状況の中、近時公刊された判例集に、使用者が主張する休憩時間の一部に労働時間性が認められた裁判例が掲載されていました。東京地判令7.3.6労働判例ジャーナル162-38FHK事件です。

2.FHK事件

 本件で被告になったのは、

飲食店の経営及び企画当を業とする合同会社(被告会社)

被告会社の業務執行社員かつ代表社員(被告代表者)

の2名です。

 原告になったのは、アルバイトから正社員になった後、被告を退職した元従業員の方です。

被告会社に未払時間外勤務手当等(残業代)を請求するとともに、

被告代表者には被告会社に時間外勤務手当等を支払わせる任務を懈怠したとして未払時間外勤務手当等に相当する額の損害賠償を請求したのが本件です。

 本件の原告が、休憩時間について

「原告の休憩時間は、長くとも平日は1時間30分、土日祝日は30分程度しか取ることができなかった」

と主張したのに対し、被告らは、

「原告は、平日は本件店舗が閉店している午後3時から午後5時まで2時間、土日祝日も少なくとも1時間の休憩時間を取得していた」

と反論しました。

 しかし、裁判所は、次のとおり述べて、被告の主張を排斥しました。

(裁判所の判断)

「原告は、各出勤日における休憩時間について、長くとも平日は1時間30分、土日祝日は30分程度しか取ることができなかったと主張し、陳述書・・・及び当事者尋問においても同旨を述べている。これに対し、被告らは、原告が、平日は本件店舗が閉店している午後3時から午後5時までの2時間、土日祝日も少なくとも1時間の休憩を取得していたと主張する。」

「この点、まず平日については、本件店舗はランチタイムとディナータイムの間となる午後3時から午後5時までの時間帯は閉店していたところ、ランチタイムが終了する午後3時頃まで客が滞在していた場合はその後に片付け等を行う必要があるし、閉店している時間においても電話対応等の業務があったと考えられる。また、土日祝日については、ランチタイムとディナータイムの間の閉店時間はなかったから、本件店舗の営業時間を通じて接客や調理等の業務を行う必要があった。なお、本件店舗に勤務する社員(アルバイトを除く。)の休憩時間があらかじめ定められていたことをうかがわせるような証拠も見当たらない。

「これらの事情に照らすと、休憩時間に関する原告の上記供述は自然かつ合理的なものとして信用することができ、他方、これに反する被告らの上記主張は採用することができないというべきである。」

3.休憩時間があらかじめ定められていなかったようではあるが・・・

 本件には休憩時間が予め定められていなかったという事案的特性があります。

 ただ、それを踏まえたとしても、具体的な時刻を前提としない概括的な主張で、休憩時間中の労働時間を認定していることは注目に値します。主張、立証の指針を示すものとして、本件は実務上参考になります。