1.「〇〇が一緒に働きたくないと言っていたぞ」などの悪口の報告
頼んでもいないのに、誰それが貴方の悪口を言っていたなどと報告してくる人がいます。言われたところで嫌な気分になるだけで、何の生産性もないように思います。
このようなことをされると、悪口を言っていたとされる「誰それ」よりも、むしろ報告をしてくる人に対して嫌悪感を持つ方も少なくないのではないかと思います。
それでは、こうした無意味な悪口の報告について、報告者の法的責任を問うことはできないのでしょうか?
昨日ご紹介させて頂いた、函館地判令6.3.27労働判例1330-74 JR北海道(パワハラ)事件は、この問題を考えるうえでも参考になる判断を示しています。
2.JR北海道(パワハラ)事件
本件で被告になったのは、旅客鉄道事業等を目的とする株式会社です。
原告になったのは、被告に採用され、函館新幹線工務所総務に異動し、A所長やB助役のもとで勤務していた方です。上司らによるハラスメント行為により適応障害を発症するなどしたとして、債務不履行(職場環境配慮義務違反ないし安全配慮義務違反)に基づき損害賠償を請求したのが本件です。
本件の原告は多数の行為を問題視しましたが、その中の一つに、次のようなものがありました。
(原告の主張)
「B助役が、所内で行われた面談において、原告に対し、『F前総務助役が嫌がっていたぞ。』、『Gさんが一緒に働きたくないと言っていたぞ。』、『7年間会社にいて今までちゃんとできた仕事があったのか。』と話した。」
裁判所は、上記行為について、次のとおり述べて、不法行為の成立を認めました。
(裁判所の判断)
「6の行為(上記行為 括弧内筆者)のうち、B助役と面談を行った際、B助役が原告に対し、F前総務助役が原告のことを嫌がっていた、Gが原告ともう一緒に働きたくないと言っていたという趣旨の発言をしたことには当事者間に争いがない(他方、B助役が『今までちゃんとできた仕事があったのか』と発言したことには当事者間に争いがあるところ、これを認めるに足りる証拠はない。)。」
「前記B助役の発言は、同じ職場内における特定の個人が原告を嫌悪している旨を端的に指摘するものであり、これを聞いた原告と他の職員との信頼関係の構築を妨げ、原告の孤立感を深めさせる効果を有するものである一方、業務指導に際して敢えてかかる指摘をする必要があるとは認められないから、これが業務指導の場面でされた発言であるとしても、相当性を著しく逸脱し、違法であるといわざるを得ない。」
「この点につき、被告は、前記B助役の発言は、原告の自覚と改善を期待して上司や先輩としての評価を原告に伝え、奮起を促したに過ぎないから、不法行為には該当しない旨主張するが、前記説示に照らして採用できない。」
「したがって、前記・・・認定の言動は不法行為に該当する(以下『不法行為3』という。)。」
3.奮起などしないであろう
誰それから悪口を言われていたなどと言われたところで、通常の方は嫌な気分になるだけで奮起などしないと思います。気に入らないことがあるのであれば、自分の口で伝えれば良いのであり、間接話法を用いる必要もありません。
裁判所も、こうした発言について「業務指導の際して敢えてかかる指摘をする必要があるとは認められない」と業務上の必要性を否定しました。
裁判所の判断は、職場の人間関係を毀損する嫌味な指導に対する警鐘となるもので、実務上参考になります。
