多人数によるセクハラ被害者に対する復職面談について、状況設定自体が強い精神的圧迫を受けざるを得ないものであったと判断された例

1.多人数による面談

 多人数による面談は、労働者に精神的な圧迫を与えることがあります。これは、従来、退職勧奨の場面で論じられることが多かった問題です。

 「退職勧奨 人数」などと入力してインターネット検索をかけると多くの法曹関係者のサイトがヒットしますが、違法な退職強要と捉えられることを防ぐため、使用者側の立会人数としては2~3人を推奨している事務所が多いように思います。

 私も多人数による面談の適否が問題になる場面は、基本的に退職勧奨の場面くらいではないかと思っていたのですが、近時公刊された判例集に、多人数によるセクハラ被害者に対する復職面談の適否が問われた裁判例が掲載されていました。一昨々日、一昨日、昨日とご紹介を続けている、東京高判令6.2.22労働判例ジャーナル148-24 東京税理士会神田支部事件です。

2.東京税理士会神田支部事件

 本件で被告になったのは、

東京税理士会神田支部(一審被告支部)

一審被告支部の総務部長(一審被告B)

の二名です。

 原告になったのは、一審被告支部の事務局職員であった方です。一審被告Bから職務上の優越的地位を背景に、同意のない性的行為(本件性的暴行)をされてPTSDを発症したと主張し、損害賠償を請求したのが本件です。このほか、原告の方は、支部役員等が十分な救済・再発防止措置や復職への配慮を行わず、人格を侵害する言動をしたことなども問題視しました。

 今日の記事で焦点を当てたいのは、復職面談時の言動です。

 裁判所は、次のとおり述べて、復職面談における一審被告関係者らの言動に不法行為該当性を認めました。

(裁判所の判断)

本件面談は、性被害により精神疾患を発症して療養のため休職中の一審原告の復職に向けて、一審原告と一審被告支部との間で双方の代理人弁護士を介した調整が行われていた状況下で、一審被告支部が一審原告に対し、一審原告が復職可能か否かの最終判断をするために当事者間の面談を行う必要があるから、弁護士を同伴せずに一人で来るように指示し、これに従い一審原告側は一人で出席したのに対し、一審被告側は支部長、副支部長等合計8名が出席して実施されたもので、そのような状況設定自体、一審原告にとって強い精神的圧迫を受けざるを得ないものであったといえる。そして、本件面談においては、まず、一審被告支部側が、一審原告に対し健康状態の説明を求めた上、一審被告支部の基本姿勢として、本件診療情報提供書に記載された回復状況から通常通り勤務可能と判断しており、時短勤務とすることは考えていないことを説明し、一審原告がこれを了解する姿勢を示したところ、話題が一審原告からの損害賠償請求に転じ、一審原告が、一審原告としては職場の環境を整えてもらえれば金銭的要求をすることは考えておらず、復職を希望する意思が強いことを繰り返し説明したのに対し、一審被告支部側の複数の出席者が、こもごも、支部役員らにおいては一審原告のために尽力してきたのに弁護士が介入して損害賠償請求をされたことを心外に思っていることや、そのような経緯があった後に復職して一緒に働いてもらうことができるのか疑問に思っていることなど、否定的感情を率直に吐露する展開となり、その中では、こんな酷いことを言われても大丈夫だという診断書をもらって来てほしいといった発言や、一審原告は魅力的だからまた誘われてしまうことがあるかもしれないといった発言など、それ自体がハラスメントに当たるといわざるを得ない言動も含まれている。

「前記認定のとおり、一審被告支部においては、一審原告から本件性的暴行の申告を受けた後、事実調査や被害拡大・再発防止の措置をとっており、また、本件面談の前後にわたり、一審原告の代理人弁護士を介して復職に向けた調整を継続して行っており、本件面談における一審被告支部側の出席者らの発言をもって、一審原告が主張するような安全配慮義務の放棄、権利行使の妨害、代理人弁護士との信頼関係の破壊、退職示唆等があったとはいえないが、本件面談において、上記のような精神的圧迫を与えかねない状況の下で、一審被告支部側の出席者らが、復職の可否判断に必要な事実確認を行うという本来の目的からは逸脱して、一審原告に対する否定的な感情をこもごも吐露し、それ自体ハラスメントに当たるといわざるを得ない言動をしたことは、一審原告に対する人格権侵害に当たるというべきである。」

「したがって、一審被告支部は、本件面談における支部役員の言動について、不法行為責任を負い、これによって一審原告に生じた損害の慰謝料額は50万円とするのが相当である。」

3.多人数での面談が問題になるのは退職勧奨の場面に限られない

 上述のとおり、裁判所は弁護士を剥ぎ取った労働者1名vs支部長ら上長8名という状況設定自体を「一審原告にとって強い精神的圧迫を受けざるを得ないものであった」と判示しました。

 残念ながら、心身に不調をきたした方に対し、暖かい目を向けない会社は少なくありません。こうした会社では、復職面談の際に労働者に圧がかけられることがあります。

 また、セクシュアルハラスメントの事後措置についても、軽視されることは決して珍しくありません。特に、被害者が損害賠償を求めるなど、会社と緊張関係にある場合にそうした傾向は強まります。

 裁判所の判断は、復職者保護、セクハラ被害者の保護を考えて行くうえで、実務上参考になります。